ブローカー間におけるスワップ証拠金の最適化

(This blog is a Japanese translation of the original Optimizing Swaps Margin Across Brokers).

相対取引に係る証拠金を減らすために、バックローディングと言う賢明な選択がある。そこで清算参加者がいかにクリアリングを要する取引のために必要となるキャピタルを削減できるかについて、8月に記事を書いた。

それは大手金融機関についての記事だったが、非清算参加者であるトレーディング・ファームについても、同様のことが言えるだろう。実際ほとんどのポートフォリオにおいて、非常に大きなアマウントについて簡単に対応できると言う事実に驚いている。より具体的には、典型的なバイサイドやトレーディング・ファームについては、時折いくつかのトレードを動かすだけで、当初証拠金の額を大きく節約できるのだ。

典型的なトレーディング・ファームにおけるアカウントの構造

通常トレーディング・ファームは複数のFCMを使っている。これはファンドの最適な利用方法はすべてを1つのFCMに集中させるべきという直感に反するものだ。もちろん、これはすべての卵を同じ籠に入れることと等しいため、以下に晒されることになる;

  • 当該FCMの定めた規定とフィーに縛られる
  • もし当該FCMに障害が起これば、すべての卵が籠の中で揺れ動くことになる(つまりバックアップを持つべきだ)

公平に言えば、ファームはさまざまなFCMからより良いサービスを受けるべきだろう。忘れてならないのは、ほとんどのファームは、FCM毎にCMEとLCHの両方のアカウントを持っていることだ。このため、典型的なファームは、3つのFCMを通じて6アカウントのスプレッドを持っていることになる。すなわち;

  • CME&LCH accounts at FCM 1
  • CME&LCH accounts at FCM 2
  • CME&LCH accounts at FCM 3

問題点

最初に下記の6アカウントを持つファームを例にして、それぞれのアカウントにおける証拠金の簡単な計算をやってみよう。

Typical example of 6 accounts and their related margin
Typical example of 6 accounts and their related margin

このファームは当初証拠金として合計304百万USドルを3つのFCMの6アカウントに差し出している。

ここで問題は、どうやって簡単なオペレーションのみで所要証拠金額を削減できるかだ。

もちろんその答えは、FCMから他のFCMにトレードを動かすことなのだが、どうやって動かすべきトレードを特定するかだ。

そのためには、それぞれのアカウントのリスク・プロファイルを特定することから始めなければならないし、集中リスクを最小化しなければならないが、そのような簡単なアプローチには複数の問題が考えられる。

  • 通常顧客に要求する掛目(ヘアカット)はFCMによって異なる。すなわち掛目のレンジは0から100%である。このため、高い掛目を要求するアカウントへトレードを移動する場合は、大きなインパクトを伴うことがある。
  • 流動性アドオンは状況を複雑化する。

一方で、すべてのトレードの証拠金インパクトをテストするための一通りのプロセスには反復作業が必要だ。もし3つのアカウントに100のトレードを持っていて、すべてを入れ換えてテストをしたい場合は;

  • 1トレードにつき3回証拠金の計算が必要で、それは、移動後のオリジナルのアカウントと移動先のアカウントについて、インパクトを計算することを意味する
  • これはこの小さなポートフォリオにおいてですら、900回の証拠金計算を要することを意味する
  • すべての証拠金計算を実行するのであれば、このような小さなブック(100トレード)でさえ、25万回のシミュレーションが必要で、これはすなわち225百万回のMTMの計算を意味するのだ
  • これは指数関数的で、もし100ではなく300のトレードを持っているのなら、20億回以上の計算が必要になることを意味する

従って手っ取り早い方法は近視眼的に過ぎるし、複雑さを考慮していないかも知れない。また反復のプロセスは非常に計算負荷が高い。

適切なソリューション

もちろん、もしこの問題を解決していなかったら、私はこれを書かなかっただろう。詳細についてはここでは記載しないが、それはスマートさと計算効率のコンビネーションにかかっている。CMEアカウントのサンプルで、最適化のための計算を走らせた結果は以下のとおりだ;

Margin savings determined by simulating the porting of trades
Margin savings determined by simulating the porting of trades

これはアカウント間でトレードを移動させることによって期待された累積的な証拠金の効率化を示している。例えば、最上位にある最も左側の数値は、FCM-3に移動させることで即座に12.7百万USドルの証拠金を節約できるトレードが、FCM-1に1つ存在することを示している。これをもう少し深堀りすると以下のように理由がわかる;

Explanation of the effects from moving the optimum single trade
Explanation of the effects from moving the optimum single trade

このトレードを動かすことで、15.4百万USドルの証拠金の効率化が達成される一方で、増加分は2.6百万USドルにすぎない。

しかしながら、もしトレードを移動するプロセスを丁寧に行うなら、誰しも1つのFCMに集約したいと思うだろう。そうしない理由があるだろうか。従ってFCM-1からFCM-2へ移動する4つのトレードを選択することで、単一のアカウントの移動において最も証拠金を削減、すなわちおよそ32百万UDドルの効率化が可能となりそうだ。

このサービスは移動すべき4つのトレードを示してくれるだろう。

Details on the 4 trades to be ported
Details on the 4 trades to be ported

これによってあるアカウントの4つのトレードを1つのクリアリングハウスにおけるトレードに移動することで、10%(304百万USドルのうちの32百万USドル)を即座に節約している。但しまだ他に2つのCMEアカウントと、3つのLCHアカウントの全てが残っている。

  • いかに早くアカウントが最適化されるかを示すことは非常に興味深い。私のサンプル・アカウントは120本から880本トレードの間で、いくつかのアカウントは5回以上の移動によってはもう効率化は不可能だ。いずれのケースでも、8回が効率化の限界だ。
  • CCP間を移動させることも技術的には可能だが簡単ではい。つまり考慮すべきであるCCP間ベーシスもあるし、また清算や執行にかかるフィーにも触れていないので。もちろん効率化が十分であれば可能ではある。

サマリー

  • ほとんどのファームは複数のクリアリング・ブローカーでアカウントを持っている。
  • これはトレードを移動させることで証拠金の効率化が可能であることを意味する
  • ファームは単一の作業で大きな証拠金の削減ができないかを考えるべきだ
  • 移動すべきトレードを決定することは決して簡単ではない

もしこのプロセスに興味をお持ちの方がいらっしゃれば、私たちはお役に立てそうです。ご連絡をお待ちしています。

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